「鎮魂 Guardian」原作和訳しながら読んでみる

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Priest作「鎮魂 Guardian」の原作小説を日本語訳しているサイトです。

〈镇魂原作和訳〉第9章 轮回晷8

念の為、中国語版と英語訳版を参照して訳しましたが、意訳誤訳はあります。ご了承下さい。

 


 


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第 9 章 轮回晷 八

 

 


  赵云澜は後ろに寄りかかり、足を組み腕を組むと、李茜を見た。「 どうして震えているんだ?あの死者の死と君は無関係で、 彼女を知らないんだろ。なら、どうして怯えてるんだ? 昨晩どうして遠回りをした? 遠回りさせるような何かがあったのか?」


  李茜は突然短く叫び声を上げて座り込んで、頭を抱え、 髪の毛で顔を覆った。


  赵云澜は彼女の腕を掴み、非常に圧のある声色で尋ねた。「 逃げても無駄だ、俺を見ろ。教えてくれ、君は一体何を見たんだ? 」


  李茜は彼の手を振り払おうとして腕を激しく振った為、 校病院のベッドにぶつかり、 鉄製のベッドの脚が床を擦って位置がずれ、摩擦音がした。
  「知りません!」彼女はヒステリーを起こして叫んだ。「 知りません!私は知りません!聞かないで下さい! 何も知りません!」


  「君が通うキャンパスは小さい。」赵云澜は低い声で話した。「 もしかすると、学校で朝食を食べている時にすれ違ったり、 同じ自習室で勉強していたり、同じ本を借りていたり…… 彼女がどうやって死んだのか知りたいか? 俺たちが彼女を見つけた時、 彼女の死体はひとりぼっちで小道に横たわっていたんだ。 腹部が鋭利なもので切り裂かれ、臓器のほとんどは取り出されて、 今も行方が分かってない。 現場に残っていた腸に付いていた歯型から、 俺たちは殺人犯が食べたのではないかと判断した。血は…… 溢れかえっていて、まだ血痕を掃除出来てないんだ。それと、 これも知ってるか……」


  李茜は叫んだ。「あーー」
  赵云澜は心を石にしたかのように、少しも心を動かさず、 彼女の意思は無視して、自分勝手に話し続けた。「 彼女の腹が開けられた時、彼女はまだ生きていたんだ。肝臓、 腎臓、胃……と1つ1つ取り出されていくのを目で見て、 咀嚼される音を聞いていたんだ。君にその気持ちが想像できるか? 」


  李茜の声は既に枯れ、彼女は再びゆっくりと丸くなって、 頭を両手で抱え込んだ。


  校医が中から叫び声を聞いて、慌ててやって来た。「 どうしました?」
  赵云澜は自分の職員証を見せると、有無を言わせずドアを閉めて、 校医が中に入るのを防いだ。「すいません、取り調べ中なんです。 あと5分だけ待って下さい。」


  赵云澜は腕を組んで、病室のドアに寄りかかり、 振り向いて李茜を見ると、既に2回言った言葉を再び繰り返した。 「教えてくれないか、君は何を見た?」


  「……影です。」李茜は突然口を開いた。


  赵云澜の笑顔は一瞬で渋い顔に変わり、彼は大股で詰め寄って、 李茜の側に座った。「どんな影だ?」


  「気を付けて。」沈巍は注意を促すと、 壁の隅に置いてあったほうきを手に取って、 地面に散らばっているガラスの破片を片付けると、 少し躊躇って尋ねた。「席を外した方が良いですか?学生、 水は要りますか?」


  赵云澜は手をひらひらと振って否定した。「いや、 居てくれた方が都合が良い。とにかく行かないで。今日、 女性同僚を連れてきていないから、 単独で彼女から話を聞いていたとなると規定違反だから。」
  そう言うと、 丸まっている李茜へ側の小さな机の上にあったティッシュの袋を彼 女に渡した。「どんな影だったかのか、ゆっくり話して。」


  「 すれ違った時に彼女のTシャツが見えたので同級生だと気付いて、 知り合いではありませんが、彼女へ挨拶しようとしたんです。 そうしたら彼女は『退いて』とだけ言って、 慌ただしく走って行って、それで……」李茜が目を上げると、 彼女の目は充血しており、ブルブルと震えていた。「 下を向いた時に彼女の影を見てみたら…… 彼女の影は1つじゃなかったんです。」


  沈巍は優しく話した。「 複数の光源がなければ複数の影を作ることは出来ません。 もしかしてあなたは……」


  「違います!そうじゃありません!」 李茜は震えた声で彼の話を遮った。「 先生の言っているような影ではなかったんです。 あの影は光がない場所で作られたような深い黒で、そ、 それにこの影は……この影は、 人の動きと違う動きをしていたんです!」


  病室は不気味な静けさに包まれ、 震え続ける李茜の骨は今にも砕け散りそうだった。 沈巍は腰を曲げると、彼女の頭を撫でて慰めた。「落ち着いて。」


  「本当に見たんです。沈教授、本当に見たんです、」 李茜は彼の裾を掴むと、突然泣き出した。「 アレがずっと彼女を追いかけていたのを見ました。 彼女が路地の中に入っていった瞬間、アレは突然、 突然地面から立ち上がって、本物の人間のようでした。 私はとても怖くなって、命懸けで逃げ出しました…… 夢か幻を見ていたんだと思いました、分かりますか?ですが、 あなた方は自分よがりに尋ね、 自分よがりに彼女のことを説明して……彼女はもう……」


  彼女はそこまで話すと、赵云澜の説明で想像したようで、 沈巍を押し退けて、壁の隅で吐いた。


  沈巍は責めるように赵云澜を見た。
  赵云澜は鼻を触ると、説明した。「あ、心配しないで。 あの反応は大したことないから。見ていないかも知れないけど、 早朝現場で俺たちの新人も吐いて海を作ってたんだ。」

 

  沈巍は呆れたような視線になり、首を横に振った。 彼は部屋を出て校医を探すとミネラルウォーターの場所を尋ね、 口を濯ぐ為に李茜へ渡すと、彼女を支えた。
  李茜はしっかりと立ち上がれず、 ヨロヨロと沈巍の腕に支えられながらベッドに座ると、 無気力に赵云澜の方を見た。「アレは彼女を殺し、 私をも殺そうとしている。 私は見てしまったからもう逃げられない、ですよね?」


  赵云澜は何も答えず、 ポケットの中から小さなメモとサインペンを取り出した。「『 アレ』がどんなだったか詳しく教えてくれないか?」


  「はっきりは見ていないんですが、アレは…… 人の形をしていました。地面から立ち上がった時は…… これくらいの大きさでした。」 李茜は身振り手振りをしながら話した。「真っ黒で、小さくて、 太っているように見えて……」


  赵云澜のペンは止まり、彼は眉を顰めて問い返した。「 小さくて太ってた?」


  李茜は頷いた。


  「本当は大きかったってことはないのか? アレを見てすぐに逃げ出したなら、 まだ完全に立ち上がっていなかったんじゃないのか?」 赵云澜は尋ねた。


  李茜は呆気にとられ、反応が少しだけ鈍くなって、 彼女は下を向いて、赵云澜の視線を避けると頷いた。「か…… かも知れません。」


  赵云澜は彼女の視線が怪しくなったのを見ていた。「それから?」


  李茜は頭を下げたまま話した。「それから、私は走りました。」


  赵云澜は何も言わず、ただ彼女をじっと見つめた。
  李茜は強く拳を握りしめた。


  しばらくすると、赵云澜は彼女を解放し、 メモを1枚剥がして番号を書いた。「何かあったり、 何か思い出したら、すぐに俺に連絡して。 24時間いつでも良いから。今日はありがとう。」
  彼は話し終わると李茜に紙を渡し、立ち上がった。

 

  沈巍:「送ります。 」
  「いや、いいよ。」赵云澜は言った。「 俺はタバコを吸いに行くから、あなたは学生と話して。 さっきは焦ってて怖がらせてしまったかもしれない、 本当に申し訳ない。」


  沈巍は李茜を見てみたが、李茜は何を考えているのか分からず、 赵云澜の言葉に全く反応していなかった。 
  赵云澜がタバコを吸いに行くと、 沈巍はできる限りの優しい声で李茜へ尋ねた。「 お腹は空いていますか?食堂で食べるものを買ってきます。」


  赵云澜が居なくなると、赵云澜の持っていた圧迫感も消え、 李茜はすぐに安心したようで、沈巍の言葉に弱々しく頷いた。 
  沈巍は再び尋ねた。「校医の先生を呼んで来るので、 ここでゆっくり休んで体が回復するのを待っていてください。 良いですね?」


  李茜は頷いた。

 

  沈巍は少し歩くと、何か思い出したようで振り返った。「 お金はありますか?無ければ私が出します、何が要りますか? 」

  李茜は彼の善意を聞き、絞り出した笑顔を見せた。「 ありがとうございます先生、でも本当に大丈夫です。」


  沈巍は彼女が溜息をついたのを見て、躊躇っているようだったが、 しばらくして含みのある言い方で言った。「 嘘には故意なものと故意ではないものがあります。 前者は他人を騙す為、後者は自分を騙す為のものです…… しかしそのどちらであろうと、嘘というのは哀れなものです。 」

  李茜は驚いた。


  沈巍は下を見た。「もう良いでしょう?あなたは自重するべきです。」

  言い終わると、彼は校医院薬局から水薬の小瓶を掴んで、 飛び出して行った。

 

  赵云澜はまだ廊下に居て、電話を受けていた。


  「聞いてはっきりした。今回のはこっちの事件じゃなく、『 あっち』側の事件だ。」 電話から聞こえる女性の声は汪徵の声ではなかった。 彼女が言葉の語尾を長く伸ばしているのは、 完全に故意であり、彼をからかっているからであった。「 昨日の夜、閉じていたはずの鬼門が開いて、 地府が登録していた魂の内、少なくとも十数個が行方不明になった。 ただ、大部分が死後7日も経っていない新しい霊で、 まだ人間を名残惜しく感じていたり、 規則が分かっていないだけだから、この霊は大したことない。 必ず困難に直面することになるから。だけど厄介なのは餓死霊も逃げ出したってこと。」


  赵云澜は聞き間違いかと思った。「何が逃げ出したって?」


  「餓死霊。」


  赵云澜はムカついて、 電話の相手は昔からの部下であったので、 彼は何も気にせず、 辺りを4度見回して人が居ないのを確認してから、 低い声で圧を掛けるように叱った。「クソ野郎のせいで何もかも無茶苦茶だ。 門番はよくもまあ餓死霊を自由にしたもんだ。 どのクソ門番が解雇されたいんだ?」


  「閉じ込める為に隙間を作らないよう気を付けていたけれど、 完全じゃなかったから脱獄された。それに、『あっち』 はまだペーパーレスオフィスも実現していなくて、 洞窟の幽霊は紀元前の管理形式をまだ使ってるの。 餓死霊たちは長い時間閉じ込められていたけれど、私なら 1日8回は脱獄出来ると思う。」 電話の女性は一息ついてから話した。「あ、そうだ。 今回は人が亡くなったから、『あの人』から手紙が届くと思う。 多分直接訪れて渡されると思うから、すぐに戻って来て。 私にあの手紙を開ける勇気はないから。」


  赵云澜は眉を顰めた。「ああ、分かってる、戻るよ。 それまでにちょっと手伝ってくれないか____ 死者が居た小道は大学通りに面していた。 あの大学通りの十字路には監視カメラがあったと思う。 何か気付くことがあるかもしれないから、まず映像を探してくれ。 それともう一度、 龙城大学の外国語大学院1年生の李茜と言う人を調べてくれるか。 ついでに、『あっち』に聞いておいてくれるか。 轮回盘という古い日時計の後ろに刻まれているのはどんなものなのか。」


  この時、彼は目の端で沈巍が追いかけてくるのを捉えた為、 小さな声で電話相手へ言った。「じゃあ、そういうことで。 ちょっと用が出来たから切るぞ。 進展があったらすぐに電話して。」


  言い終わって、赵云澜は振り向くと、 あっという間にチンピラのような顔から文芸青年のような顔に変わり、優しく礼儀正しい様子で言った。「ここで大丈夫、沈教授は本当に親切すぎる。」